写真家・阿部秀之氏インタビュー「メモリーカードに求められるもの」

「CP+2022」Nextorageブースにてプレゼンテーションの出演を予定していました写真家・阿部 秀之氏に、撮影でのメモリーカードにまつわる体験談や性能についてお話を伺いました。

フィルムからデジタルへ。メモリーカードは小型化したものの…

阿部:僕は感光材料学を学んできて、長年フィルムで仕事していたんですけど、デジタル化のおかげでフィルムが受けるダメージが気にならなくなった。今も海外に行くことが多いんですけど、デジタルカメラってX線の影響を受けないので、なんて良いんだろうって思いますね。その不安がなくなったものの、約20年前―コンパクトフラッシュ形状のマイクロドライブ(HDD)が存在していた時代からそのサイズの小型化を望んでいたところ、SDカードが出てきました。だけどとにかく不良が多かった。実際に壊れていなくてもエラーメッセージが出ると嫌なんですよ。「このカードをフォーマットしますか?」等、あの文面が神経を逆なでするというか(笑)。


カメラ繋がりの友人から「(カード)二枚出しの撮影で一枚カードにエラーが出たら、二枚とも撮れなかった」という話を聞いて。原因はリブが折れたって。カメラじゃなくて、安いカードリーダーが咬んで、抜き差しするときに折れたんじゃないかと考察していたんだけど。自分自身ではライトプロテクト(スイッチ)が、PCに入れる際にオンになって、書き込み禁止モードになるストレスを感じた経験があります。

―ライトプロテクトスイッチは程よい重さであればよいのですが、ホールド力が弱い製品だと意図せず動いてしまいますね。

見えない持ち物にもこだわってほしい

阿部:僕としてはソニーの「TOUGH(タフ)」に信頼性をおいていたので、Nextorageブランドは「TOUGH」に携わっていたメンバーが手掛けているということは大きなアドバンテージだと捉えています。企画が日本の会社であるという点からも信頼しています。フォームファクターについても業界で様々な種類が登場して混沌とした時期はあったものの、XQDが登場して以来、XQDと同型のCFexpressに落ち着いてきていると見ています。
ある時、海外メーカーでとんでもない厚みのあるカードがあり、スロットから抜けなくて大変苦慮したこともありました。
メモリーカードは普段はカメラの中に隠れた存在だけど、不安を払拭するためにも良いものを使っていただきたい。靴がキレイに磨かれているかどうか、みたいなもの。カードリーダーについても信頼できるもので揃えたい。Nextorageにはカードリーダーも作ってもらいたいと思っています。

―撮影された素材は、一旦カードリーダー経由でPCに保存するのでしょうか?

阿部:カードリーダー経由でPCに保存します。カメラからPC直結はしません。バックアップはある意味儀式みたいなもの。海外では盗難や紛失のリスクもあるし、保存するときはPCと外付けSSD等、必ず2カ所に保存しています。

―カメラ直結で転送する場合はカメラが使えなくなりますね。

阿部:カメラ本体のバッテリーを消費してしまう要因もありますね。コマーシャル等の撮影では、大量のカットをシーン毎にカードを替えて撮り、アシスタントが都度シーンチェックします。

メモリーカードの交換タイミング

―メモリーカードはエラーが出るまで使われるのでしょうか?または一定期間をもって交換されるのでしょうか?

阿部:新しいカメラを買ったときに複数枚購入し交換しています。ちなみにCFexpressが発売される前から主にXQDカードを使っていましたが、エラーは出たことがないので今でも現役で使っています。

― 海外での撮影にはカードは何枚くらい持っていかれるのですか?

阿部:予備として8枚、カメラ(ダブルスロット)2枚、計10枚を持っていきます。ただし、静止画、動画などシチュエーションや被写体によって異なります。僕の撮影は主に風景なので、連写は使わないケースが多いですね。タイムラプスでは容量を使います。露出を前後3コマずらして撮るブラケットのときは容量を使いますが、最近のカメラは露出が良く当たるのでブラケットすることは減りました。

― 撮影はRAWで撮られるのですか?

阿部:クライアントにもよりますが、基本RAW+JPEGです。

「RIGID(リジッド)仕様」について

― 2021年にNextorageブランドからUHS-I SDカード3種をリリースしました。「NRS-Hシリーズ RIGID仕様」「NFS-Mシリーズ」「NUS-Mシリーズ」です。「RIGID仕様」はソニー「TOUGH」と同様の一体成型モデルで、ライトプロテクトスイッチと端子面のリブを省いて破損のリスクを取り除いています。一般的なSiP構造のSDカードと製法が違い、外装を硬度の高い樹脂で隙間なく完全密閉しているため、クラス最高等級の防塵防水性能(IP68)、SD規格の18倍の曲げ強度と、高い衝撃性を達成しました。

NRS-Hシリーズ RIGID仕様

阿部:カメラマン仲間で、うっかりジーンズのポケットにメモリーカードを入れ忘れて洗濯してしまうことがあったそうで防水性がある「RIGID仕様」は良いですね。素材の関係だと思いますが(一般的なSDカードと比べ)テーブルにポンと置いた時の音も違いますよね。高級品である備長炭が当たったときのような軽やかな良い音がします。UHS-I対応のカメラは多いですし、耐性の高いSDカードは良いですね。UHS-IIも出される計画があれば、ぜひ継承してください。

―容量は64GB、128GB、256GBですが、容量ラインナップとしてはどうでしょうか?

阿部:動画の撮影では512GBは欲しいところです。使い方によって256GBでも足りるケースは考えられますが、最近は高容量も安くなっていることもありますから。

データの転送速度について

― 各スペックですが、Read 97MB/s、 Write 91MB/s、 UHSスピードクラス3、ビデオスピードクラスはV30。100Mbpsの4K動画も十分記録できます。高速転送のメリットはどんなところでしょうか。

阿部:2カ所にバックアップしたデータ(JPEG+RAW)を編集しています。JPEG納品もありますが、個展やクライアントから要件がある場合、ソフトで編集して納品します。デジタルカメラが進化していずれも画素数が大きくなってきていることから、作業効率の面でも高速転送は求められます。以前は動画データをバックアップする際、寝る前にスタートさせて起床時に確認していましたが、現在は撮影を終えてすぐバックアップ作業に入れる高速のカードが出ています。転送時間を気にせずバックアップできるのは本当にうれしいですね。

― 当然、メモリーカードの公称値に近づけるためには、PC、カードリーダーのハイスペックが前提になりますよね。

Nextorageに期待すること

― Nextorageとしてはカードだけではなく、ソリューションを含めた製品提案ができ、なおかつ日本のメーカーとして信頼を得る必要があると感じています。

阿部:安売りする必要はないと思いますが、信頼性と安全性の高さはぜひ強くアピールしていただきたい。ユニークさもあればなお良いですね。先ほど「CP+ 2022」 で参考出展予定と聞いた「二次元バーコード付きメモリーカード」をチラ見させてもらったけど、まさにこのようなユニークさを持っている会社だと実感しました。これからターゲットユーザーへの幅広い商品展開で、次の領域に進んでいくことを期待します。

(左から) 商品企画 木村、阿部英之氏、開発エンジニア 山田
(参考)二次元バーコード付きSDカード

写真家

阿部 英之

東京都出身。1986年よりフリー。長年に渡ってヨーロッパとアジアで海と海辺の出来事を撮影。ニッコールクラブ会報誌に「アベっちのZの秘密」を連載中。ニコンイメージングジャパン公式YouTube「Zの世界」を配信中。ニコンミュージアムではレンズの実験室の監修を務める。1987年よりカメラグランプリ選考委員。